【SAW】なぜアダムは試されることなくゲームオーバーを迎えたのか?

映画考察

ソリッド・シチュエーション・スリラーの金字塔であり、未だ色あせない名作映画「SAW」
2004年に公開されてから20年が経過した現在でも続編が製作され続けている、もはや伝説の映画シリーズといっても過言ではないだろう。

本シリーズでは続編が公開される度に、作中で散りばめられてきた謎が明かされていく。
まさしく「ジグソウ」パズルのピースをはめていくようなシナリオだ。

しかし、合計10作品が公開された今でも「最初にして最大のピース」である謎が未解明のままだ。

その謎とは、「なぜアダムは生存のチャンスを与えられなかったのか?」という点だ。

本記事では「SAW」の記念すべき1作目最大の謎について考察していく。

ジグソウはアダムにもチャンスを与えていた

結論から書いてしまうのだが、まず「アダムにも生存のチャンスは与えられていた」というのが大前提だ。

ジグソウは「殺人」を強く嫌悪しており、自らの仕掛ける「ゲーム」で被験者に更生してほしいという思想のもと、数々の凶行に及んでいる。
上記のことから、ジグソウが初めから「確実に死ぬ」ゲームを仕掛ける可能性は低く、アダムにも生存できる可能性は与えられていたと考えるのが自然だ。

アダムは「ゲーム」の駒ではない

本作のメインである「時間内にアダムを殺害しなければゴードンの家族が死ぬ」というゲームは、一見ゴードン医師の為のゲームであるように見える。
アダムは上記の為の歯車であり、ゲームの結果によって生死が決まる「舞台装置」としての役割しかないように感じるかもしれない。

だが、このゲームを細かく分析すると「ゴードンへのゲーム」として片付けるのにはいくつか疑問な点が出てくる。

なぜ「ノコギリ」は2つ用意されていたのか?

まず第一に「ノコギリ」というアイテムについてだ。

足をつなぐ鎖は切れないが、人の骨と肉なら何とか切断可能な程度の切れ味のノコギリ。
これはジグソウが「鎖から解放されたければ自らの足を切断しろ」といった意図で与えたものだ。
本来の流れであればゲームをクリアした後、ゴードンが部屋から脱出する際に足を切る為使われるはずだったものだ。
「ゲームをクリアしたのに足を切断する必要があるのか?」という疑問が出るかもしれないが、これはもしゴードンが正規の流れでゲームを遂行した場合、あのバスルームに救助は来ないからだ。

その理由は何故か?
では、「もしゴードンが時間内にアダムを殺害してゲームをクリアしたら?」という仮定のもと予測してみよう。

まずはゲームクリアからその後予測される展開を時系列順に羅列していく。

①ゴードン、アダムを殺害しゲームクリア

②ゼップ、カメラ越しにそれを確認しゴードンの妻子を解放

③同時にゼップのゲームもクリアとなり、解毒剤を受け取りに行く
※この際、ゼップが向かう先はバスルームではない

④ゴードン、バスルームで起き上がったジグソウと対面

⑤足を切断して脱出するか、ここで死ぬか?と試される

私はこうなるのではないかと考えている。
疑問点が多々あると思うが、一つ一つ順を追って解説していく。

ゼップが向かう先はバスルームではない

「ゲームをクリアしたらゼップが救助に来るのでは?と思うかもしれない。

だが、よく思い出してほしい。

ゼップは足枷のカギを持っていないのだ。

作中ではゲームに失敗したゴードンを始末するべく、バスルームに向かったゼップ。
その後、死んだふりをしていたアダムに襲われて死亡してしまっている。

だがその後、アダムがどれだけ探してもゼップの所持品の中には、足枷のカギは無かったのだ。

つまり、ジグソウは元々足枷のカギは用意しておらず、脱出には「足の切断」が必須のゲームとして設計していたのだ。

ここで、一つ気づきがあるはずだ。

脱出=足の切断とするならば、当然ノコギリが必要だ。
そして、このゲームではノコギリは2つ用意されていた。

つまり脱出の鍵はノコギリであり、それが人数分用意されているということはアダムとゴードンの両者に平等に生還のチャンスを与えていたのではないか?と推察できる。

バスタブの鍵は足枷の鍵ではない

「足枷の鍵は用意されていない」というならばアダムが目覚めた際に、排水口から流れていった鍵は何だったのか?という疑問が生まれる。

アダムがゼップの死体から「足枷の鍵」を探している際に、ジグソウが「鍵はバスタブの中だ」と話したことから、皆さんが「足枷の鍵は最初に流されてしまったんだな」と考えるのは自然だ。
だが、ゲームのシナリオを紐解いていけば、これは間違いだと分かる。

破綻するシナリオ

もし仮に、バスタブの鍵=足枷の鍵だった場合のシナリオを考えてみよう。

アダムはバスタブの鍵を用いて足枷を解錠し、部屋の中で自由に動けるようになる。
その後、ゴードンの足枷も外してやり、2人はゲームのテープを聞く。
この状態で「アダムを殺害すればゴードンの家族は助かる」というゲームが始まってしまう。

考えられる結末は「殺し合いになりどちらか一人は生存する」か「ゲームを失敗し、2人とも生存する」あたりとなるだろう。
ゲームの成否に関わらず、少なくともどちらか一人が部屋の中で完全に動ける状態のままゲームが終了するのだ。
この状況下でもし、シナリオ通りジグソウが起き上がろうものなら生存者は「こいつが犯人だ」と即座に判断し、ジグソウに反撃するだろう。

上記の通り、もし足枷の鍵が最初から手に入っていた場合、ゲームが破綻することが考えられる。
加えて、ジグソウが用意していた仕掛けを見ても「足枷が外れている状態」はおかしいことが分かるだろう。
作中の2つのシーンを思い出してほしい。

アダムが死んだふりをしたとき、なぜ嘘だと見抜かれたか?

ゼップの銃を奪ったアダムがジグソウに反撃しようとしたとき、どんな仕掛けで阻止されたか?

そう、「足枷から電流を流す」という仕掛けだ。

上記の仕掛けをジグソウが用意していた以上「足枷が最初に外せるゲーム設計」である可能性は限りなくゼロに等しいだろう。
つまり、バスタブの鍵≠足枷の鍵となる。
ではこの鍵はなんなのか?答えは「部屋の扉の鍵」だ。

本来であれば、先に足を切断する覚悟を決めた者が鍵を使って脱出できるゲームだったのだ。

アダムがゲームに勝つシナリオ

前項で書いた通り、このゲームは「足を切断する覚悟」がある者が勝利する設計となっている。

では、上記の前提を踏まえて「アダムがゲームに勝利するシナリオ」をシミュレーションしてみよう。

アダム生還のシナリオ

アダム、バスタブで目覚める。
その際バスタブ内に鍵が落ちていることに気が付き、それを入手。
鍵を用いて足枷を解錠しようとするも、鍵は別のところのものらしい。

ゴードンも目覚め、ゲームのルールを2人で聞く。
アダムは、ゴードンに殺されるか鍵で逃げ出すかをジグソウに試されていると悟る。

制限時間が迫り、このままではゴードンは家族のために自分を殺すだろうと推測し、アダムは脱出の覚悟を決める。
足をノコギリで切断し、バスタブにあった鍵で部屋から逃げ出すアダム。
その時点でゴードンの「制限時間内にアダムを殺害する」というゲームは失敗に終わる。

時間になり、ゼップがバスルームに到着。
妻子を始末したことを伝え、ゴードンも「ルール」通りに始末する。
ゼップはゲームを完遂し、生存する。

また、足首から大量に出血しているアダムはバスルームの外で衰弱。
アダムの後を追ってきたジグソウがそれを救出し、アダムは生還する。

「おめでとうアダム。君は生還した」

アダムとゴードンに「生きる意思」を競わせていた

簡単に「もしアダムがゲームに勝利していたら?」というイフストーリーを考えてみたが、筋道は通っているのではないだろうか?
そして、アダムの勝利シナリオから見ると、ある一つのゲーム像が浮かび上がってくる。

それは、「アダムとゴードンのどちらかが勝つ」というゲーム設計だ。

もしゴードンが勝てば、アダムはルール通り殺害されて敗北してしまう。

もしアダムが勝てば、ゴードンの家族はゼップに殺害され敗北してしまう。

上記のように、ジグソウは両者の「生きる意思」を競わせていたのだ。

ジグソウは平等にチャンスを与えていた

いかがだっただろうか?
『SAW』一作目の最初にして最大の謎を徹底的に考察してみた。
突飛に思える意見や、ほとんど想像の産物のように感じるかもしれないが、いちSAWファンの一つの見方として楽しんでいただければ幸いだ。

以上、「なぜアダムは試されることなくゲームオーバーを迎えたのか?」でした。
読了いただき、ありがとうございました。

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